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「漆崎(ウルシザキ)」 「知ってる。先生が呼んでた。そうじゃなくて下の名前。星の愛って書いてなんて読むの?」 「星愛(セイナ)」と答えると、彼も「セイナ」と呟いた。 「サンキュー」と答えを教えてもらったことに対してか、礼を述べた。 体育館の扉に向かって走り出したかと思えば、一度だけ足を止めてあたしを見た。 「セイナってかっこいい名前だな」と笑った。 当時のあたしはショートカットで男の子みたいだった。身長だって、後ろから数えたほうが早い。 ウルシザキという名字はあたしっぽくても、セイナという名前はあたしっぽくない気がしていた。 星なんて説明されなくても、空に輝いている美しいものだと、頭に植えつけられているような言葉。愛だって同様だ。 それにあたしは、似つかわしくない。 例えば、隣のクラスの髪の長いお人形みたいな女の子ならとてもよく似合うのに。 名前とあたしが釣り合わないから、恥ずかしかった。ただそれだけで、小学生の女の子が上手く会話できない理由になる。 だから、そんなことを言われたこともなく、なにも言い返せなかった。 かっこいい名前、なんて思ったことはなかったなと、少し考えて、ただ無言で頷いた。
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