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ミニバスの練習が終わった土曜日の午後、自転車の施錠を外していると、「セイナ!」と大きな声で名前を呼ばれた。 普段名前を、しかも呼び捨てで呼ばれることがないから、どう反応していいのかわからなくて、気づかない振りをした。 「セイナ!」 それでも聞こえない振りを続けていると、肩をトンッと小突かれた。 「……クニヒロくん」 「セイナんちって何丁目?」 「うち?んーと、四丁目」 「俺、こいでやるから一緒帰ろうぜ」 「えっ?」 無理矢理というほどではないけど、あっさり自転車のブレーキをクニヒロに奪われてしまった。 「ほら、乗れよ」と、あたしの自転車の荷台に乗るように彼が言う。 うっすら首筋に見える汗の粒。 あたしより焼けた黒い肌に、夏の日差しがじりじりねじ込んでいるのか、腰に添える程度に置いた手は熱かった。 住宅街の間を走りながら、同級生の男の子が家に遊びに来るんだと笑いながら言った。 「セイナも来るか?」 「あたしも?」 正直、迷った。少しだけ遊んでみたいという気持ちもあるけど、あまり話したことのない男の子と話せるかわからないといった緊張もある。 「暇だったら来れば?」 「……うん」と頷きながら、少しお腹の真ん中あたりに重りがのしかかったような憂鬱も入り混じった。
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