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夏休みに合宿があった。
午後の練習も終わって、夕食をみんなで食べた。最終日の夜だからって、外で花火と肝だめし。
クニヒロはなぜか、幽霊の役だった。
ペア決めは、くじ引きだから、密かにクニヒロとペアになれたらと願っていた子もいたんじゃないかって想像ついた。
見えない溜め息が夏の夜に漂っている気がした。
「あたしたち、女二人?」と、あたしとペアになった女の子が笑いながら言った。
女バスのほうが人数多いから、仕方のないことだ。
時間を少し置いて、順々に夜の小道を歩いて行く。雑木林がガサガサ揺れて、明るい宿泊所の前から見ても不気味だった。
「蚊に刺された」と友達が騒いで、虫よけスプレーを取りに行ったせいで、最後になってしまった。もうゴールしてるペアもいるというのに。
片手に懐中電灯を持って、歩く。数分の距離なのに、先が見えにくいからか、ドキドキする。
「幽霊役の先輩たち、どこに隠れてるんだろう?」と、友達が声を潜めた。
「そろそろ出て来るかもよ?あそこの茂み怪しくない?」
「言われてみれば」と、幽霊役の先輩に気でも遣っているのか声をまた潜めた。
ガサガサと葉を揺らす風。そればかりに耳がいく。
「セイナ、今なにか言った?」
「言ってないよ」
「嘘」と呟くから、「脅かさないでよ」と軽く肘でつついた。
だけど、彼女は真顔でしっと指を立てた。
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