旅仕舞いの夜

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旅仕舞いの夜

アークは部屋に戻って寝支度を整えると、露台に出た。 その奥の庭園は美しく保たれ、アークは深く息を吸い、花と木々の香りを感じる。 今日昼からのことは、楽しく胸に刻み込まれた。 ミナの能力の使い過ぎのことは、デュッカに任せておけば大丈夫だろう。 悔しいが、一番近くにいて、見守っているのだ。 アークは大きく伸びをした。 ミナが帰ってからも、どこか落ち着かなかった心が、穏やかになっている。 落ち着かなかったのは、ミナが3週間もの静養を余儀なくされた出来事が要因となっていた。 だが今日長い時をミナと共に過ごして、彼女の回復を実感できた。 そして何より、ミナの言葉ひとつ、笑顔ひとつに癒された。 ああ、帰って来たんだ、と思った。 長かった。 実際の時間はもちろんのこと、待つ身には、とても長い旅だった。 明日からまたミナは王城を離れるが、週末には帰ってくる。 そのあとは1週間、いや、もしかしたら2週間王城で過ごす。 アークは自然と顔がほころぶのを意識した。 今日こそ、ミナの帰着の日だと、アークは思ったのだった。
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