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「ああ、あそこに水の流れた線がありますよ。あそこの木の下辺り…」
言いながら、リザウェラは現在の水の位置と比べて、愕然とした。
大人2人分くらいの差がある。
サリも気付いたらしく、一気に青ざめたのが分かった。
「わたくし…わたくし、早く行かなくてよいのでしょうか…?」
リザウェラはほんの少し動きを止めたが、首を横に振った。
「サリ。街の様子を見るのでしょう?それは今回の目的のために必要だと感じたからではないですか?そうであれば、見て回るべきです。ここに住む者たちのためにも」
言われてサリは、少しの間考え、頷いた。
「ええ、わたくし、必要だと思います…!見て回って、明日、改めて行くことにいたします」
リザウェラはにこりと笑って頷き、サリを眺めた。
心を決めたサリは、唇を引き結び、谷側の窓の外を眺めていた。
うつくしい黄葉。
このままの状態が続けば、失われてしまう。
気持ちを新たにしたサリは、微妙な緊張感からは脱し、前を向く。
リザウェラには、その気持ちが強く伝わってきた。
何を見て、聞くにしても、この状態ならきっと大丈夫、と思えた。
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