彼方の場景

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       ―ユーカリノ区国境地帯 Ⅰ―    昼食を終えたミナたちは、まず礎のある場所に行った。 南から順に回るのだ。 ユーカリノ区東側が終わったら、次はレシェルス区東側、ボルーネ区東側というように回る。 礎のある場所には1時間ほどで着いて、ミナは馬車を降り、結界石を見ながら必要なことを書き留めていく。 礎は、主にロアが設置したものなので、結界石も新たに用意されたものだ。 その構成は、黒土石の要石(かなめいし)を中心に、同じく黒土石の補助石が取り巻いている。 レグノリア区同様、不完全体の数は半々といったところだ。 だが、巧みに、余分を残して使用しているので、きっかり完全体値であり、結界に影響はない。 念のため、パリス・ボルドウィンを誘導して、その余分を透虹石(とうこうせき)に吸い取らせた。 透虹石とは、人や彩石の力を吸い取る石だ。 そこまでやって、ミナは少し首を傾けた。 結界石の値にずれがあるのだ。 これは自分が再度来て、改めるしかないだろう。 そうすると、巡視を二度しなければならなくなる。 まあ仕方ないかと思い、報告用の紙にそのことも書いて、セラムに王城まで送ってもらった。 国外にいたときはデュッカに頼んだが、国内であればセラムでも、ステュウでも充分だった。 そこまで済むと、次に行こう、と言って、ミナは馬車に乗り込んだ。 地味な作業だが、ミナは楽しくやっていた。 こういう単純作業は好きだし、木々の匂いのする空気が吸えてすごく気持ちいい。 「楽しそうだな」 馬車のなかでデュッカに言われて、ミナは元気に、はい!と答えた。 「こういう作業好きです。まあ、休みが多いのもありますけど。選別場で働いていた頃は、休憩時間が限られていましたから」 選別場か、とデュッカが呟いた。 「戻りたいか?」 ミナは首を傾けた。 「戻りたいという気持ちはないですが。今待遇いいですから。慌ただしくここまで来て、いつのまにか判定師だって思っちゃってますけど、いつまでもこのままじゃ、いられないのかな…」 「何故だ?」 ミナはデュッカを見て言った。 「いずれ代われるひとを探さなければいけません。私はいつまでも生きてない。その人が全部やれるようになったら、私は必要ないから…うーん、その頃に選別場に戻れるか不安です」 かなり時間がかかりそうだ。 「以前個人営業するとか言ってなかったか?」
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