彼方の場景

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       ―王城 Ⅰ―    セラムからの伝達は15時半ば頃届いた。 内容は、今日おこなった礎の判定結果で、結界石があとどれだけ保つかと、修復についてだった。 それによれば、当面結界石の取り換えの必要はないが、修復について少し困ったことがある、とのこと。 結界石はきちんと完全体値で組まれているものの、そもそも結界石の値がずれている、ということだった。 その差は1000カロン未満で、全体で見れば微細な差だが、ひとつの要石に対する補助石の値が一定でないため、結界の歪みに繋がるということだった。 このため、次の巡視にミナが同行して、組み直す必要がある、とのことだった。 アークは額を押さえて報告書を読みなおした。 国内とはいえ、またミナを遠征に行かせることになる。 一度組み直せば、あとは使用する彩石を指定することで、修復も判定師も長期間必要なくなるだろうとあった。 判定師も必要ない…。 その一文に反応してしまうのは過敏だろうか? ミナが、去ることを考えているように思えてならない。 「ミナ、なんだって?」 側宮の仕事の範囲を見に来たというルーク…双王のひとり、祭王ルシェルト・クィン・レグナがそう声をかけてきた。 用事が終わったので、夕食までこの部屋で過ごすことにしたのだ。 手にはアークに依頼された確認書類の束がある。 「もう一度ミナが巡視する必要があるって…楔はまだだけど。礎は、確定だと思う」 「どこが悪かったの?」 「結界石の値が同一じゃなかったんだって。正確には補助石が」 ルークは首を傾げた。 「補助石だけ?要石はいいの?」 「要石のことは書いていないわ。ルークが聞く?」 「いいの?」 意外そうな声を上げるルークに、アークは頷いて言った。 「結界はあなたの領分だもの」 ルークは笑顔になって、急いで手紙を書いた。 ここにいるだけで、アークの役に立てているような気がした。
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