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馬車旅
―ユーカリノ区へ―
ミナは窓の外を眺めていた。
レグノリアの街並みをチュウリ川に沿って、ユーカリノに向けて走る馬車のなかだ。
ここ、アルシュファイド王国は、東西を峻厳な連峰に挟まれており、中央に1本大きな川が流れている。
チュウリ川だ。
このチュウリ川は、遠く北の海から、南の大海に繋がる大陸最大の湖、レテ湖まで、大陸を縦断している。
レグノリアは、このレテ湖とチュウリ川を中心に栄えている王都だ。
ミナは少し前に出てきた王城の玄関前に並んだ者たちを思い浮かべる。
アルシュファイド王国双王のひとり、政王アークシエラ・ローグ・レグナ…アーク。
宰相ユラ-カグナ・ローウェン。
彩石騎士筆頭ルゥシィン・ヴィーレンツァリオ…シィン
彩石騎士アルペジオ・ルーペン…アル。
同じく彩石騎士ファイナ・ウォリス・ザカィア・リル・ウェズラ。
同じく彩石騎士カィン・ロルト・クル・セスティオ。
王城書庫管理官マエステオ・ローダーゴード…テオ。
いつも見送ってくれる顔ぶれに、ミナはそっと微笑む。
彼らのことを思うとやさしい気持ちになる。
ミナは…ミナ・ハイデルは彩石判定師だ。
この世界のすべての人は、分量の差こそあれ、土、風、水、火の4つの力のいずれかを、1種か数種持っている。
ミナが判定する彩石(さいしゃく)とは、この能力…異能を助ける働きのある石だ。
その石には3種類ある。
ひとつは異能を増大させるサイゴク。
もうひとつは異能を減少させるサイジャク。
そして、石自体が力を持つサイセキだ。
今回判定するのは、このうちのサイセキで、それらはこのアルシュファイドの国土を守るための2種類の結界に使われている。
ひとつは、東西連峰をあらゆる破壊から守る絶縁結界。
もうひとつは、あらゆる侵入を阻む壁状結界。
このうち絶縁結界は、北方にあるセイ島と、南方にあるエラ島で繋がれており、アルシュファイドを外敵から守っている。
そして、絶縁結界はその範囲を指定するための楔として、壁状結界はその形を維持するための礎として、サイセキを使用しているのだ。
彩石には、質の良し悪しがある。
良いものは、力量の最小単位である1カロンにぴたりと当てはまるが、悪いものは、1カロンに満たない過不足がある。
そしてこの良いものを完全体、悪いものを不完全体と呼ぶ。
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