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完全体は力量を正しく使えるが、不完全体は多くの場合、不完全なままで使用するので、術の不安定さや、ときに体の不調を招く。
現在、結界に使われている結界石のなかには、この完全体と不完全体が入り交じっており、ミナは、その見分けと、不完全体だとしても、1カロン単位で使用されているかと、あとどれだけ役目を続けていられるかを判定する。
これは、彼女ひとりにしかできない作業だ。
彼女の感知能力はそれほど稀有で、常人が3種類まで持つ力を、4種類保持しているため、土、風、水、火のどの彩石でも判定することができる。
彼女は、主にこの能力を使って、様々な事柄を成してきた。
その働きのうち、大きなものは、カザフィス王国、サールーン王国、セルズ王国に設置された、この世界にただひとつの火山から国土を守るための火山結界の修復と、戦を続ける2国に挟まれ、戦禍の絶えなかったザクォーネ王国を両国から隔てるための絶縁結界構築だ。
だがそれにもまして、利用価値の高い能力が彼女にはあった。
彩石を探し当てる能力だ。
彩石は貴重な資源だ。
それを彼女は、探し出せる。
個人としても、国としても、手に入れたい能力だ。
このため、主に誘拐を想定して、彼女には護衛が付けられている。
その名は、ハイデル騎士団という。
団長ムティッツィアノ・モートン…ムトを含む14人で構成されている。
そのなかで、ミナと馬車に同乗するのは、最年少のイルマ・リ・シェリュヌだ。
彼女はミナの向かいの、扉側に座り、異変がないか窓の外を眺めている。
確かレシェルス区出身だったな、とミナは思う。
今日、ミナと同時に出発し、まだ先行して走っている馬車に乗る、水の側宮サリ・ハラ・ユヅリが向かう場所だ。
水の側宮(そばみや)とは、水の宮を助けるための役職だ。
王都レグノリアには、表神殿と呼ばれる場所があり、そのなかに、土、風、水、火の四の宮がある。
これら四の宮の主な仕事は、異能判別と、人々の異能に関する様々な問題を解決することだ。
この宮には、それぞれが双王に次ぐほどの力量を持つ、責任者がいる。
土の宮公ロアセッラ・バハラスティーユ・クル・セスティオ…ロア。
風の宮公デュッセネ・イエヤ…デュッカ。
水の宮公カリ・エネ・ユヅリ。
火の宮公カヌン・ファラ。
このうちカリの仕事…レシェルス区に出現した巨大彩石の処理を、サリは命じられた。
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