11人が本棚に入れています
本棚に追加
ミナは、少し心配だった。
サリが役目を全う出来ないという心配ではない。
出来ないという不安を持ってはいまいかという心配だ。
それは存分に能力を行使する妨げとなるだろう。
そばで、大丈夫だよと声をかけてやりたいが…、それは彼女のためにならない。
それに、彼女を信じていないと思わせることにもなるだろう。
信じていないのではなく…それはいとしく思う気持ちだ。
詭弁だろうか。
でも…彼女には出来ると知っている。
彩石の大きさは障害とならない。
彼女にはやり遂げるという意志があるから。
「心配か?」
同乗し、ミナの向かいに座るデュッカがそう言う。
彼はミナの負担軽減のため、馬車の振動をなくす役目で、ここにいる。
ミナはちょっと笑って彼を見た。
「まあ…心配です。でも、出来るから。次会う時は、きっと…」
晴れやかな顔をしているはずだ。
出てくるときは緊張していたけれど。
笑顔を深めるミナを見て、デュッカは彼女の耳に手をやる。
そのままじっと彼女を見つめ…首筋を撫でる。
「ごほん!」
わざとらしい咳払いが隣から聞こえた。
デュッカはそちらをちらりと見て、仕方なく手を離す。
イルマを邪魔だと思う程度には、公共の場での作法は心得ていたし、重んじてもいた。
ミナはほんの少し頬を染めながら、窓の外を見た。
風の宮公たる彼が、たかが彩石判定師の負担軽減のためになど動いていいはずがない。
だが、それなら何故同行してくれるのか…考えたくなかった。
知らないでいた方がいいのだ。
その方が…楽だ。
ミナは、心の奥底で、そう思っていた。
だから、どうしてと思っても追求しない。突き詰めて考えない。
卑怯だし、臆病だ。
知っていたけれど。
現実に向き合うのは、怖かった。
最初のコメントを投稿しよう!