馬車旅

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ミナは、少し心配だった。 サリが役目を全う出来ないという心配ではない。 出来ないという不安を持ってはいまいかという心配だ。 それは存分に能力を行使する妨げとなるだろう。 そばで、大丈夫だよと声をかけてやりたいが…、それは彼女のためにならない。 それに、彼女を信じていないと思わせることにもなるだろう。 信じていないのではなく…それはいとしく思う気持ちだ。 詭弁だろうか。 でも…彼女には出来ると知っている。 彩石の大きさは障害とならない。 彼女にはやり遂げるという意志があるから。 「心配か?」 同乗し、ミナの向かいに座るデュッカがそう言う。 彼はミナの負担軽減のため、馬車の振動をなくす役目で、ここにいる。 ミナはちょっと笑って彼を見た。 「まあ…心配です。でも、出来るから。次会う時は、きっと…」 晴れやかな顔をしているはずだ。 出てくるときは緊張していたけれど。 笑顔を深めるミナを見て、デュッカは彼女の耳に手をやる。 そのままじっと彼女を見つめ…首筋を撫でる。 「ごほん!」 わざとらしい咳払いが隣から聞こえた。 デュッカはそちらをちらりと見て、仕方なく手を離す。 イルマを邪魔だと思う程度には、公共の場での作法は心得ていたし、重んじてもいた。 ミナはほんの少し頬を染めながら、窓の外を見た。 風の宮公たる彼が、たかが彩石判定師の負担軽減のためになど動いていいはずがない。 だが、それなら何故同行してくれるのか…考えたくなかった。 知らないでいた方がいいのだ。 その方が…楽だ。 ミナは、心の奥底で、そう思っていた。 だから、どうしてと思っても追求しない。突き詰めて考えない。 卑怯だし、臆病だ。 知っていたけれど。 現実に向き合うのは、怖かった。
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