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人波をかき分けて現れたのは、全身スカイブルータイツに身を包んだ一人の男であった。ボロボロのラジカセを肩に担ぎ、音量MAXでメロディを垂れ流しまくっている。そして、胸に書かれた『めんご』の文字。あまりの怪しさ全開に、周りの人々が凍りつく。
「ごめんなさい」
大音量で流れるメロディに負けない声の大きさで、男は腰を直角に曲げ、唐突に謝った。
「なんザマス? あなたは? いや、それよりもまずは音楽をとめるザマス。耳が痛いザマス」
ピッ。マダムの言葉にうなずき、男は停止ボタンを押す。
「よくぞ言ってくれた、マダム。白状すると、俺もうるさくてたまらなかったのだ」
だったら、なぜ流した!? 見守る群衆のだれもがそう思った瞬間であった。
「では、改めて答えて進ぜよう! この世にトラブルあれど、謝罪なし。怒りが残り、天地が騒ぐ。だれが呼んだか解決の使者。ラジカセ片手に今日も街行く人に代わり、お詫びする。謝罪戦士ゴメンナー。ここに見参!!」
長ったらしい口上を言い終え、ゴメンナーはご満悦な表情を浮かべる。今日はぜんぜん噛まずにすらすらできた。心の中は、そんな喜びでいっぱいだった。
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