詫びれ! 謝罪戦士ゴメンナー

5/6
前へ
/6ページ
次へ
 マダムが高級バッグからサイフをとりだそうとした直後、彼女から血の気が引いた。 「ない! ないザマス! わたくしのサイフが!」 「なんだと!?」 「きっとさっきの男にスられたんザマス。早く警察に電話しないとザマス」 「早まるな、マダム」  携帯電話を手にしたマダムの腕を、ゴメンナーがつかむ。むさ苦しい視線を飛ばしながら、首を振る。それから、ゆっくりとひざまずき、ラジカセを置き、マダムの手を放し、両手を地面につけた。 「ごめんなさい。犯人に代わって謝罪する。頼む。許してやってくれ! このとおり。警察だけは勘弁してくれ」  頭を地面にこすりつけ、見事な土下座を披露した。美しすぎる謝罪に、みなが息をのむ。  これぞ謝罪戦士ゴメンナーの必殺技・大地への接吻(キストゥガイア)である。  マダムの指が、しかし、無慈悲にも110を押す。 「もしもし警察ザマスか?」 「なぜだ? マダム!!」  顔を上げ、悲痛な叫びで訴えるゴメンナー。その瞳に涙を浮かべながら。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加