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マダムが高級バッグからサイフをとりだそうとした直後、彼女から血の気が引いた。
「ない! ないザマス! わたくしのサイフが!」
「なんだと!?」
「きっとさっきの男にスられたんザマス。早く警察に電話しないとザマス」
「早まるな、マダム」
携帯電話を手にしたマダムの腕を、ゴメンナーがつかむ。むさ苦しい視線を飛ばしながら、首を振る。それから、ゆっくりとひざまずき、ラジカセを置き、マダムの手を放し、両手を地面につけた。
「ごめんなさい。犯人に代わって謝罪する。頼む。許してやってくれ! このとおり。警察だけは勘弁してくれ」
頭を地面にこすりつけ、見事な土下座を披露した。美しすぎる謝罪に、みなが息をのむ。
これぞ謝罪戦士ゴメンナーの必殺技・大地への接吻である。
マダムの指が、しかし、無慈悲にも110を押す。
「もしもし警察ザマスか?」
「なぜだ? マダム!!」
顔を上げ、悲痛な叫びで訴えるゴメンナー。その瞳に涙を浮かべながら。
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