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「げろ?」
私を知ってるのかと思わず首を傾げた瞬間、蛙の様な声を捻りだしてしまい慌てて口を押さえた。
「なかなか近くに居ても会えないのに、珍しいねえ。お土産屋さんの制服も可愛いじゃないか」
可愛い。
その言葉が胸の中でエコーするほど、29歳には嬉しい言葉だ。
「院長、ナンパですか」
「可愛い奥さんにいいつけますよ」
「息子さん、泣きますよ」
スーツ軍団が冷やかす中、その枯れイケメンは頭を掻いて苦笑している。
「違うよ。2件隣の家の、女の子なんだ。弟の幼馴染み」
……え?
もしや。千葉病院の跡取り、千葉司さん?
「ヴィヴィン。ま"-ま”-! ちばざぁん」
女子力捨てて淡を切ったが、声は戻らない。
酷い声だった。
「あはは。喉が腫れてるのかな。無理に声ださないで。そうそう、昨日から旺大が家に帰ってるから会ってやってよ。婚約も破棄しちゃって、出世の道も閉ざされたし」
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