150人が本棚に入れています
本棚に追加
旺大と聞いて露骨に嫌な顔になりそうで慌てて下を向く。
「時間があ゛り゛ま゛じだら゛」
こんな蛙みたいな声で会えるわけない。
散々昔馬鹿にしてきたんだから仕返しに馬鹿にされるに決まってる。
たださえ婚約破棄されて、ぶっさいくな奴が心までヤサグレてるはずだし。
「伊織ちゃん。--今夜、僕のために空けてくれないかな?」
「!?」
だ、だめよ。この人は確かに高学歴高収入、イケメン、性格良し、だけど既婚者よ。
婚活から1番遠い世界の人なのに。
「ね。おいで。うちの奥さんの料理、すっごく美味しいし、旺大も喜ぶよ」
そりゃあ昔は、あの広い豪邸に進入したりしてたけど、今とじゃ状況違うじゃない。
「え、院長の奥さんの手料理いいなぁ」
「俺も参加したいです」
「い゛ぎ、ま゛ず!」
現金な私は二つ返事で行くことにしてしまった。
喋れないくせに、どうしてこの二人とお近づきになれと言うのかはわからないくせに。
最初のコメントを投稿しよう!