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この世は平等じゃない。
結婚と恋愛は大きくずれちゃって、愛だけじゃ結婚式はあげられないし、好きって気持ちだけじゃお腹が膨れない。
性格が悪くたって、結婚したいんだよ。
ちやほやされたいし、あったかい家庭欲しいし。
焦れば焦るほどこんな醜い自分が露呈していくだけで恥ずかしいんだよ。
ほんのちょっとでも、小指の爪の先ぐらいでも、司さんの愛人とか誘われたらどうしよう、とか。
カタカナの料理ばかり作る奥様の前で独身医師たちに出汁を使った和風な逸品を作ってやろうって思ってたのも全部、白紙にされた。
世界は、私以外は綺麗すぎる。
「な、泣かないで、喉がさらに腫れちゃうよ」
「どうしたんだよ、おねえちゃん、セーリ?」
類くんの言葉に、ばこんとティッシュ箱とリモコンで叩いた二人を見て更に温かくて泣いた。
どうしてこんな幸せな三人が居るのに、私は幸せを見つけようと足を開けば蛙になってしまうのか。
やらせろよ。
結婚できるまで色んな相手とセックスさせろよ。
「処女なんて、いつまでも取ってても仕方ないんだから!」
そう叫んだ瞬間、ガタガタガタと何かが倒れる音がした。
「しょ、しょ、処女?」
「母さん、処女って何?」
類くんの質問に、奥さんは悲鳴で答えた。
「きゃああああ! 蛙!」
「あ、ああ待って瞳」
「母さん?」
バタバタと三人分の足音が消え、私の目の前には小さい黄緑色の蛙がお利口に座っていた。
「……お迎えに来たの?」
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