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青ざめる私をよそに、その蛙は後ろから両手で掬われた。
「いえ。これで貴方を脅すつもりでした」
「……あんた」
蛙を小さな虫籠に入れているのは、昨日会った魔法使いだ。
「……29歳で処女って、貴方高校の時に野球部キャプテンに」
「ファーストキスを貰ってもらったの。でも恋愛経験はあるし彼氏はいたけどセックス経験なしよ! だから急いでたの!」
「……納得しました。私の勘違いだったんですね」
白衣の魔法使いは顎に手を当てた後、そのまま私の前に座りこむ。
「魔法を解きますから、目を閉じてください」
その言葉に、おお泣きしてすっきりした私は色々と憑き物が落ちたかのごとく安心して目を閉じる。
この魔法使いの言葉は嘘じゃないと、確信した。
だって誰とも意思の疎通ができなかった蛙語をこの人は聞きとってくれたんだもの。
それぐらい私に愛があるんだもの。
「そうでしょ、旺大」
私の返事に、その白衣の魔法使いは返事をくれた。
魔法が解ける口づけで、返事をくれた。
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