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「あ。か、可愛いね。たくさん種類もあるし」
席に着いてそう言うと真上君は小さく笑った。
ブッフェは3時に始まるそうで、今、店内では各々歩き回ってケーキをチェックしたり、写真を撮っている女性で一杯だ。
「俺はここにいるから佐藤も写真を撮ってきていいよ」
「ううん。大丈夫」
私は首を振った。
SNSはやっていないし、写真を撮ったところで他の人に見せることもないし。
「写真、撮らないのか?」
「うん。私は目より口に味を焼き付けるから」
そう言って、片目を伏せて唇を指さしてみた。
すると彼は目を見開き、そしてふっと表情を綻ばせた。
「佐藤らしい」
私らしいってどういう意味だろう?
小首を傾げる私に真上君は答えてくれる。
「色形より味」
「うん、食いしん坊みたいな言い方はやめようか」
「かなり的確な表現だと思うけどな」
にっこり笑みを向ける私に彼は苦笑いする。
反論しようとしたその時、ブッフェ開始の挨拶が告げられた。
「さて」
どれから食べようかな。
テーブルにずらりと並べられたデザート類に目移りしてしまう。
真上君は何から食べるだろうとつい気になって、落としていた視線を彼の方へと向けると、彼の前にも色とりどりのデザートが並び立てられていた。
そういえばさっき、このイベントのダイレクトメールが来ていたと言っていたっけ。きっと参加したことがあるんだろう。
元カノと一緒に来たのかな。
……って、超どうでもいいことです。食べよ食べよ。
気を取り戻して、目に付いたラズベリーのマカロンを口にした。
「美味しい!」
「そう。良かった」
いちいちそのキラキラした笑みをこちらに向けないでいただけますか。食べるのに喉が詰まるでしょう?
「佐藤は休みの日、何してる?」
真上君が会話を振ってくれる。
「友達と会ったり、買い物かな。真上君は?」
「基本ジム通い。出かけたりもするけど」
「へえ。そ、そう。ジム……」
そっか。食べた分だけ消費するってわけね。私? ええ、そのまま身体にお肉として身に付きます。
思わず食べるスピードが落ちてしまうかと言えば……そうでもない。
ダイエットは明日からが本番です。
「あーあ。このブッフェのことを言ってくれれば、今日戦闘服で来たのにな」
「戦闘服?」
「ワンピース」
「……言えば良かったな」
真上君はなぜか複雑そうな表情を浮かべた。
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