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本日は日差しも穏やかなので、カフェテラスでランチとなった。
浜中さんが好きで通っているお店で女性に人気があるらしく、いつもお昼時は賑わっているとのこと。テラス席はやはり開放感があるし、春秋は過ごしやすい季節なのですぐに席が埋まってしまうらしい。
「――というわけなの」
私は昨日の経緯をごく簡単に浜中さんに説明した。
「へぇ。同級生に会ったんですか。私は社会人になってから偶然に友人と会ったことはないかな」
何だか運命的ですねと笑う彼女。
運命かどうかはさておき。
「それで、お茶に誘われたんだけど服装がね。どんな物を着て行こうか、悩んでいるの」
「それまでの間柄にもよりますけど、具体的にはどれくらいの関係ですか?」
「関係? 関係……。あ、知人以上友人未満ってとこかな」
ま、まあ少々口説かれたけど。ほんの、ほんの少しだけ。しかしだからと言って、まだ友人以上になったわけではない。
意味も無く、ストローでグラスの中の氷をカラカラかき回してみる。
「何ですか、その察してチャンは……」
浜中さんは呆れた表情を浮かべ、一つため息を吐いた。
「とりあえず、ほぼ仲良くはないってことでいいですよね。どんなコンセプトで行きたいとかありますか?」
「あ、えーっと。あまりね、お洒落お洒落したくはないんだよね。楽しみにしているみたいだから」
「楽しみじゃないんですか?」
「え。い、いや、ほらそれは」
気合いが入りすぎと思われるのは恥ずかしいというか、癪というか。ええ、手前勝手なプライドだって分かっています。でも。
「精一杯お洒落しているのって、何となく痛いし」
「えー。そこはそう見せていいんですよー。男性は自分のためにお洒落して来てくれたのかって、喜ぶものなんですから」
「勘違いしないで。べ、別に喜ばせたくはないんだからねっ!」
「私相手にツンデレしてどうするんですか」
拳を作って声高らかの私に対して浜中さんはくすくす笑う。
「ち、違うから」
「何着ていこうと悩んでいる時点でもう意識されているんですけどね。それで? 会うのはいつですか? 何なら今週の日曜日でも買い物に付き合いますよ」
「ありがとう。でも会うのは今週の土曜日なの」
「ええ!? 明後日の土曜日ですか? 随分急な話じゃないですか。昨日のお話なんですよね」
「うん。なりゆきで」
「へぇ。なりゆき」
彼女は意味深な笑みを浮かべた。
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