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「おはようございます、佐藤さん」
「おはよう。浜中さん」
本日は月曜日。
私の顔を見るなり、彼女は飛んで来た。
「土曜日はどうでしたか――って聞かなくても分かりますね。頬が緩んでいますから」
「え?」
自分の頬をぷにぷにとつねってみた。
「でもお昼、聞かせて下さいね!」
浜中さんは会社から近い所で新しいお店を開拓するのが好きだそうで、お洒落な場所を知っている。
しかし、今日はゆっくり話をしていても問題ない所ということでファミレスに来た。
「あのね、やっぱりワンピースで行けば良かったと後悔したの」
「でしょう? 彼氏さん、困ったでしょう?」
「彼氏じゃないし。困ったのは私だってば。お茶って、デザートブッフェだったのよ。言っておいてくれればワンピースで行ったのに。スキニーのせいで全種類制覇できなかった」
食べ過ぎて、お腹ぽっこりになったら嫌だもんね。
「そこじゃない……」
浜中さんは肩を落とす。
「でも楽しめたみたいで良かったですね」
「うん、ありがとうね。あ、でも元カノが現れた時は焦りました」
「何ですって!? なぜそんな面白そうな事を初めに言わないんですか!」
彼女はテーブルを拳でどんと叩いた。
「今、面白そうって言っ――」
「で! どんな状況だったんですか」
「え、えっと」
浜中さんの迫力に負けて私が概要を説明すると、彼女はうんうんと大きく頷く。
「そのタイプって自分に酔っちゃうから質が悪いんですよね。彼氏さん、大丈夫でしたか」
「彼氏じゃないってば。うん、彼女は穏便に帰ってくれた」
ああ、それにしても彼女には偉そうに言っちゃったな。……反省。
「良かったです。その元カノさんって、どんな感じの方でした?」
「そうね。小柄でふわふわっとした感じ。男性が守ってあげたくなるタイプかな」
「佐藤さんと真逆ですね」
余計な事は言わなくてよい。
「それで佐藤さんはその彼女さんとのやり取りを見て、どう思われましたか?」
「どうって」
「嫌だなって思いませんでしたか?」
「それは思ったけど」
痴話ゲンカなら第三者がいない所でやってくれと思いました。
「胸が痛みませんでしたか?」
「うん? 胸焼けならした」
「やーん。嫉妬来た! 恋する乙女ですね」
いい大人ですから、やーん、は止めなさい、やーんは。それに嫉妬じゃないし。
あと、乙女から抗議が来るので『乙女』も止めて……。
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