いつもと違う月曜日

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 あ、そうだ。  真上君の大事な傘、広げてしっかり乾燥させていただきましたよ! 『お疲れ様です。土曜日はありがとう。傘はいつ返せばいいですか』 『日曜日』  傘の一文を添えてメールを送ると、すぐに返ってきた。どうやら真上君は家にいるようだ。  私は了解のメッセージを送る。するとまたすぐに返事が来た。 『ごめん今の間違い。お疲れ様』  あ、やっぱり都合悪かったのかな?  指を止めて考えていると再びメッセージが届く。 『こちらこそ土曜日はありがとう。今度の日曜日、予定ある?』  え? 日曜日に傘を返すってことでいいのかな?  疑問に思いながら返信する。 『大丈夫。傘、返すね』 『違う。俺の実家に犬を見に来ない?』 「え」  思わず声が出てしまい、はっと顔を上げると前に座っている若い女性と目が合った。お互い苦笑して会釈する。  そしてまた携帯の画面に視線を移した。 『ありがとう。嬉しい。行きたい』  そこまで文字を打つと送信ボタンに指を動かすが、一瞬迷う。  嬉しいって言葉は直接的すぎるかな。でも、ほら。ワンちゃんに会いたいし。  ……うん。素直じゃないな。  見苦しい言い訳に自嘲しながら送信する。 『良かった。じゃあ、家に連絡しておく』 『ありがとう。傘も持って行くね』 『傘は別の日で。荷物になるから』  帰りにお母様からおかずを持たされるとかかも。じゃあ、傘は次の機会として。  そうそう。お家に訪問するのだから手土産を持って行かなきゃ。 『了解です。ところでご家族は何人ですか』  そう打ったが、ふと気付いて送信しようと思った指を止める。  ご家族の人数を聞けば正確だけど、きっと遠慮されるだろう。大家族と聞いていないし、ホールケーキかロールケーキを持って行けば大丈夫かな。あ、あとワンちゃんにも!  そして家族のくだりは消そうとしたが、間違って『何人ですか』だけを消して送信してしまった。 『大丈夫。いる』  真上君から即時に返信が来たけれど……。大丈夫、いるってどういう意味だろう?  お家にお邪魔してご家族に迷惑じゃないかなと気を遣っている場合、『大丈夫、いない』の方が一般的な回答の気がするんだけどな。  ま、いいか。彼も間違ったんでしょう。 『うん、分かった』 『待ち合わせの時間はまた連絡するよ』 『はい。連絡お待ちしています』  送信すると、私はやり遂げた感でほっとため息を吐いた。
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