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「何?」
「いえいえ。服装でしたね。……んー。昨日、仕事帰りってことはいつものパンツスーツ姿だったんですよね?」
「ええ、そうね」
「じゃあ、やっぱりスカート姿がいいでしょうか」
「うーん。最近、履いていないんだよね」
久々にスカート姿になると自分自身に違和感を覚える気がする。
「でも普段着ではなく、あまり頑張りすぎないお洒落さで、かつ、脱がせやすい服なら……ワンピースかな」
「うん。そう――」
頷きかけて、ふと聞き捨てならない言葉に気付いた。
「ちょ、ちょっと? 最後、妙な事を言わなかった!?」
「ワンピースは無難ですよ?」
「違う、その前!」
「脱がせやすい服ってことですか? 分かっていますってば」
な、何ということを言う娘なんだ、この子はぁぁ!
頬に熱が集まる。
「昨日再会したばかりって言っているでしょうが。そ、そんなことするわけないでしょ!」
「だって、その彼は急な約束を取り付けてきたんでしょう? それだけ本気だってことですよ。相手はおトモダチ以上の関係を望んでいるってことじゃないんですか?」
「わ、私相手だよ!? そんなわけ、ないじゃん!」
彼女の鋭さになぜか思わず真っ向から否定してしまう。
「ですよねー」
「……だからすぐさま肯定するなと言うに」
「もう、どっちですか」
女心は複雑なのよ……。
再び浜中さんはくすくすと笑う。すっかり楽しんでいる様子だ。
「相手の方は佐藤さんに好意を持っているのは間違いないですよ。でも脱がせられないヘタレ男なんてダメダメ。お勧め出来ません」
片目を伏せ、指でバツ印をしてみせる浜中さん。
「そ、そんな人じゃないから! む、むしろ再会して二度目で脱がせてくるような男なら、十二単か甲冑でも装備していくわい!」
「やだもー、佐藤さんったら冗談ですよ。可愛いなぁ」
手をぱたぱた縦に振ってみせる彼女。
まったくもう……。
眉を寄せる私に対して、彼女はにこにこ笑っている。
「話を戻しますけど、佐藤さんはすらっと背が高いし、足を強調するような服装がいいかもしれないですね」
「スキニーパンツみたいな細身のものとかかな?」
「それはだめです。スキニーは脱がせにくいから男性には評判悪いんですよ」
「だーかーらー! 脱ぐ発想から離れろぉぉ。こ、こうなったら私は絶対にスキニー履いて行くからね」
私はそう言って拳を作ると浜中さんはため息を吐いた。
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