真上家へお邪魔する

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 現在、お風呂場の姿見の前で胸元を確認したり、後ろ姿を確認したりと、くるくる回っている。 「おかしく……はないかな」  鏡に映る自分は深い草色を基調としたワンピース姿だ。丈は膝下五センチといったところか。  本日は真上君の実家に柴犬ちゃんを見にお邪魔するということで、それなりにおめかししているのだ。  髪の毛は普段バレッタで簡単に留めているだけだが、今日は編み込みでハーフアップにして、化粧もいつもよりほんの少し手を入れている。  私にしては『頑張っている』と思う。 「んー、少し短いかな。でもこれくらいならまだ許容範囲のはず。ロングスカートはだらしなく見えることもあるし」  ぶつぶつ呟いていると、コンコンと扉を叩く音がする。 「あ、はーい」  扉を開けるとそこに母が立っていた。 「里香。いつまで脱衣所を占領しているの?」 「あ。お母さん、この格好、どうかな?」 「あら、珍しい。ワンピース姿だなんて。デートにでも出かけるの?」  からかうように笑う母。 「……デートじゃないよ」 「ええ、知っていましたとも」  母は澄まし顔で答える。 「ソーデスネ」  苦笑していると、母はその格好いいじゃないと取って付けたように言ってくれた。 「準備はできたの? 理がシャワーを浴びたいって言っているのよ」 「何よ、あの子。休みなんだし、何も昼間からお風呂に入らなくったって」  お姉様が出かける前に装いチェックしているのだから譲ってしかるべき。 「理は彼女と出かけるそうよ」 「…………すぐ代わります」  格上の弟にすごすごと退散する私だった。  真上君は今住んでいる所から電車に乗って来るので、今日の待ち合わせは私たちの町の最寄り駅だ。  私は少し早めに出てケーキ屋さんに入る。  ホールケーキだと少し気を張りすぎだし、ご家族の方も気を遣われるだろうから、私の中ではお気軽なロールケーキを選んだ。  そして真上君が降りて来るのを待っているわけだが。  よく考えてみたら、ご家族がいるんだよね。  二人揃って家に行くって、まるでけっ――の報告みたいじゃない!?  う、うわぁぁぁ。  ごめんなさい、ごめんなさい違うんです。私はワンちゃんにお会いしたくてですねー。  今更ながらに大変な事態に気付いて狼狽える。  に、逃げる? 逃げちゃう?  不届きな考えを抱いたその時。 「佐藤?」  背後から真上君の声が掛かった。
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