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はっ。
家族がいるから大丈夫って、そういう意味!?
そこまでの考えに及ぶまで私は自意識過剰じゃないんだからねっ。
「佐藤、顔真っ赤。ああ、ティラミスのブランデーのせいか」
真上君は先回りして答えを出してくれる。
うー。完全にからかっているな。何とか一矢報いたいところだ。
「あれ? 言い訳しないの?」
返事をしない私に彼は首を傾げる。
「――う」
「え?」
「違う。か、要君のせいよ」
せめてもの抵抗でそう答えると真上君は目を見開き、今度は彼が一瞬言葉を失った。
「カウンター攻撃強すぎる」
消え入るように言うと、彼は目元を赤く染めて自分の前髪をくしゃりと掻き上げる。
「佐藤はいつも不意打ちでずるいな。敵わない」
不意打ちとは言葉が悪いし、敵わないと思うのは私の方です。それにやっぱり恥ずかしすぎる。
諸刃の剣でした……。
二人の間に微妙な空気が流れ、何とか雰囲気を変えようと視線をおろおろ彷徨わせていると、本棚に立てかけてあった卒業アルバムが目に入った。
「あ!」
「え、何」
急に叫んだ私に真上君はびっくりしたようだ。
「中学の時の卒業アルバム、見て良い?」
「駄目。まったく何でそんな所に置いてあるんだ。母さんの仕業か?」
彼はうんざりした様子で呟いた。
「私も家にあるわよ」
「それはそうだけど」
「でしょう」
私が立ち上がってアルバムを取り出すと、真上君はため息を吐く。
「私は一組だったの」
私は座りこむと一組のページを開けた。
今はセミロングの長さだが、この時はショートボブだったようだ。
「やだ。わっかー。この頃の私、ちょっと可愛くない?」
真上君の方に向くと、ふさげて言ってみる。
「うん、可愛い。今も」
「…………真上君は三年生の時、何組でしたでしょうか?」
私は頬に熱が帯びる前にアルバムへと視線を戻した。
お願い。冗談なのだから冗談で返して。――まあ、冗談で言ったのなら、それはそれで怒るんですけどね!
「五組」
「そっか。一度も同じクラスにならなかったね。あ。真上君、発見」
五組のページを開いた私は彼の写真をトントンと人差し指で叩いた。
ふっくらした可愛い少年だ。
「酷いな、この公開処刑」
「この頃の方が可愛くて愛敬があるって」
「可愛いって男に言うセリフじゃないな。それに今の俺は愛敬がないってか」
そう言って苦笑する真上君にふと思った。
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