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「えっと。は、話がずれちゃった。結局、真上君が突っかかってきたのは何だったの?」
この雰囲気を壊すため、話の軌道修正を試みる。
「あ、もしかして私ごときが学校の王子様だった野々村君に告白など言語道断、頭が高いと思ったとか?」
「……そんなわけないだろ」
「じゃ、じゃあ。真上君はそんなに私のことが好きだったか。なーん――」
茶化そうとした私の声に反応して彼は眉を上げる。
あ。しまった。
真上君の表情を見て反射的に思った。
「じょ、冗談ですハイ」
私は小さく両手を挙げるが、彼はその瞳を真剣なものにする。
「冗談じゃない。弘貴から佐藤に告白されたと聞いてすごく嫌な気持ちになった。断ったと聞いてほっとしたけど、でも佐藤が傷ついているかもしれないのに、そんなことを考える自分が嫌だった」
近付く彼に距離を取ろうと腰が引ける。
「あ、のね、真」
「だからそんな複雑な気持ちで佐藤に突っかかってしまった。でも、ずっと後悔していた」
頬はこの上なく熱いし、頭からは蒸気が上がりそうだ。
あ、あれ? さっきのこじらせた初恋って、私のこと?
「ソ、ソーデシタカ。そうとはつゆ知らず、すみませんでした」
そう答えるので精一杯だ。
動揺すると言語能力が著しく低下するのはなぜでしょう。
何とか後ずさりして逃げようと絨毯に置く私の手の上に真上君は自分の手を重ねた。
その手が酷く熱く感じる。
「過去形じゃない。今も好きだよ。再会してもっと好きになった」
す、好き!?
散々迫られたけど、好きと言われたのは初めてだ。
あ、いや。りかが好きって言われたっけ。
りか? 理科? 里香? いや。それ、今超どうでもいい。
部屋に二人になる私、警戒心が薄すぎとか、家族がいるから手を出さないって言ったもんとか、そもそも警戒心を抱かなきゃいけない相手なのかとか、頭の中がごちゃごちゃになる。
パニックになりながら、さらに身を引こうとする私の手を彼は強く握りしめた。
「逃がさない」
強烈な拘束力の言葉に胸が痛くなるほど高鳴った時。
コンコンッ。
部屋に軽い音が響く。
そして扉の外で、のんきそうなお母様の声がした。
「要、お茶のおかわりいかが?」
途端に真上君はがくりと項垂れる。
「……だよな。こうなるって知ってた」
うん。
こういうのって全国共通イベントですよね。
私も知ってたよ……。
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