スイーツ男子にご注意

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「お邪魔いたしました」  私は真上君のご家族に頭を下げた。  来た時と同様、玄関先で家族総出で見送りに出て下さっている。 「要が女の子を連れて来るなんて初めてだったから、今日はすっかり舞い上がっちゃったわ」 「これからも愚息を何卒よろしく!」  ご両親のお言葉に動揺してしまう。 「里香さん、困ってるよ」 「誉、お前は里香言うな」  眉をひそめる真上君に風太君を抱いたお祖父様が笑う。 「要がいなくても、風太に会いに来てやってな」 「わふっ!」 「はい! ありがとうご――」  風太君を撫でて元気よく答えようとした時、横から冷たい視線が刺さった。  じょ、冗談ですよぉ。 「要さんと一緒に」  言い直すと真上君はふっとため息を吐いた。 「じゃあ、送ってくるから」 「はーい。里香さん、ぜひまたいらしてね!」 「ありがとうございます。それでは失礼いたします」  ご家族にもう一度頭を下げて、私たちは真上家を後にした。  辺りはまだ明るい。けれどもう半時間もすれば、きっと空が茜色に染まる綺麗な夕暮れとなるだろう。  一緒に見たかったな――なんてね。 「あ」  歩き出して、ふと気付いた。 「高校の卒業アルバムを見せてもらうの、忘れていたわ」 「ああ、止めておいた方が良いな。俺に惚れても知らないぞ」 「それもそうね。じゃあ、止めておく」  悪戯っぽく笑う彼に私はあっさり頷いた。すると真上君は空笑いして言った。 「やっぱり今度持って来て見せるから、惚れろ……」 「私の家、ここなの」  意外にあっさり着いちゃった。  自分の家の前まで来ると、真上君に振り返った。 「思いの外、真上君の家から近かったんだね」 「そうだな」 「送ってくれてありがとう」 「ん。こちらこそありがとう。風太も喜んでたし」  苦笑いする真上君。 「風太君、真上君より私が好きって? 照れるなぁ」  私はドヤ顔してみせたが、彼はすっと笑みを消した。 「違う。――風太より俺の方が佐藤を好きだ」 「っ!?」  心臓を射貫かれ、頬はボンと火を噴く。  何という卑怯な奇襲。 「じ、自分で言ってて恥ずかしくないですか」 「本気だから。佐藤にとってはいきなりだろうけど、でも俺は本気だから」  茶化そうとする私に対して、彼は真っ直ぐに見つめて来る。  ひたむきなその瞳に狼狽えて、私は半ば目を伏せた。 「……うん」  分かっている。だけどもう少しだけ……。
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