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茫然とする私に対して、野々村君は相変わらず人の良さそうな笑みを浮かべている。
まるで気持ちいい天気だねと口に出したかのようだ。
そうか。彼に対する違和感の正体はこれだったのか。
前に会った時、浜中さんに向けていた視線は好意的なものではなかったように思う。あの時、口元は笑みを浮かべているのに目だけは笑っていなかったんだ。
返す言葉も無く、ただ彼を見上げている私に言う。
「女はちょっと馬鹿な方が可愛げがあるよ。小賢しい女は、スペックの高い男には容易に見抜かれて嫌われる」
……そう。そう来るのね。
柔らかな容姿と表情とは裏腹に私の可愛い後輩を、女性を見下した口調に、どこかで試合のゴングが鳴った気がした。
「じゃあ、行こうか」
野々村君は爽やかに、にっこりと笑った。
「……あのね。行きたいお店があるんだけどいいかな?」
「いいよ。君に任せる」
「ありがとう」
私はお礼を言って先導した。
「ここでランチ?」
席に着き、周りを見渡す野々村君が少し呆気に取られたその店はパンケーキで有名な店だった。
平日にもかかわらず、見渡す限り女性客で一杯だ。
店内には私と同じくお昼のひと時を利用した会社員や優雅な時間を過ごすために来られた奥様方が見られる。
真上君と同じく甘党なのか、わずかに男性もいるが、女性だらけの店内ではさすがに肩身が狭そうだ。
「いつも行列で入れた試しがないの。今日は運が良かったわ。野々村君のおかげかな」
悪運強そうだもんね。
これは心の中だけで留めておく。
「要は甘い物好きだけど、俺は嫌いなんだよね。匂いだけで胸やけしそう」
おや、まあ。こっちは心の中で留めておくだけにしてあげたというのに、この正直者め。
正直な気持ちには正直で答えるのが礼義だ。私の気持ちも素直に口にしよう。
「うん、そうだと思った」
野々村君は目を細める。
「女の子って甘い物好きだよね。口ではダイエットと言いながら食べているイメージ」
「あはは。否定はできない」
「女性ホルモンの関係だとか、自分へのご褒美とか、自己管理ができていないだけなのに言い訳だけは上手だよね」
笑顔なのに口調に棘がある。ギャップ萌えとかそんなレベルではない。
けれど私としては却ってこういう男性の方が戦いやすい。
「驚いた。野々村君って性格が悪いのね」
そう言うと彼の方こそ驚いたらしい。目を見張った。
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