974人が本棚に入れています
本棚に追加
/243ページ
レイニンちゃんの記憶から、俺は真実を一つだけ知っている。
「弱みを見つけたつもりなのか、お前は先日からそこばかりチクチク攻めてくるが、問題ない」
「真実なんですか」
「200年前の話だ。もう居ない相手の事を俺は引きずらない。お前も忘れればいい」
魔王らしい脅しの言葉。
その言葉がなんだか弱々しくて、頼りない。
俺だけが知っている真実。
魔王はその昔、自分に初めて背いた人間に惹かれていた。
きっと恋とか愛とか言葉でその感情を表すには、200年経った今難しいだろう。
魔王の心には、今も200年前に会った勇敢な勇者の姿がそこにあるんだ。
「あんた、今から俺と結婚するって騒いでるらしいじゃん」
「まあな。お前は可愛いし面白いし、俺と対等で在ろうとして生意気だから」
縛りつけてみようと思ったんだ、と魔王は言った。
昔々の勇者に俺は言いたい。
アンタが魔王を病ませてしまったせいで、俺は囚われて、二の舞にならないように縛りつけられようとしてる。
でも本気で抵抗しようにも、変な情が沸いてできないのは、勇者のせいなのか。魔王のせいなのか。
200年前の勇者に会って言ってやりたい。
最初のコメントを投稿しよう!