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この短時間で何を書いたのか気になったけど、その手紙がうねうね動いているのを見て、そっとリーの背中に隠れたのだった。
「さすが、魔王だ。季節の触手も添えてる」
「なんだよ季節の触手って」
昔の文みたいに、季節の花を手折って文と共に渡す文化か。
「まあ、見てみなよ」
リーに見せられた魔王の文を見て、俺は笑顔のまま固まった。
「なんか魔王の手紙、読めない字なんだけど」
「ああ、触手語だよ。授業で習ったでしょ。魔界の暗号文を解くために」
習った記憶はないが、リーは知ってるらしい。
大きく溜息を吐いた後、俺に教えてくれた。
「短歌や和歌みたいに、触手のしなりぐあいで気持ちを添える触手語は、ほぼ魔界にいるモノたちは全員読めるよ。触手のしなり具合を見て相手の文章に恋しなくちゃ。あとお香や花を添えるようなもんだよ、季節の触手を添えることは」
「……だって季節の触手がなんか、動いてるんだ。これなんて書いてるの?」
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