6人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
俺も座ると、袋から取り出したショートケーキにロウソクをさしてやった。
「一本でいいわ」
「ああ」
「ハッピバースデー」
「ハッピバースデー……」
マッチでロウソクに火を灯すと。
ドアから二人の警官が駆け込んで来た。
「何やってるんだ? 君たち?」
警官の一人が唖然とした。
「お祝い。私、家族から誕生日を一度も祝ってもらったことがないの。パパとママが寝付いたころにこっそり抜け出してきたの……」
「そうか……」
「どうします?」
二人の警官が腕組をして相談事をしていた。
一人の警官が進み出て、俺の革ジャンを剥ぎ取り、奥に仕舞ってあるサバイバルナイフを取り上げた。
小さな女の子はロウソクの火を消した。
そうだ。
幸せって、誰かに祝ってもらわないと意味がないんだ。
俺は小さな女の子の頬にキスをした。
「お誕生日おめでとう」
「ありがとう。また、いつか祝ってね」
「ああ。約束するよ」
小さな女の子は幸せそうに微笑んでいた。
「こんなに嬉しくて楽しい日がお誕生日なのね。私、忘れないわ」
きっと、これが彼女の最後のバースデーなのだろう。
俺にはまた少女を祝ってやることができるのだろうか?
最初のコメントを投稿しよう!