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「気にならねぇ?グングニールに選ばれし者であるはずのカナハタル国の城だけが壊滅した、なんて話」
ニヤリとキールに瞳だけ、意味ありげに向けた。
「……城だけねぇ。まるで……グングニールに意志があるみたいだな?マッド」
いつものことらしく、ため息をつく。
「そうそう!グングニールに意志があるとか、裏付け出来たら丸儲けできそうなんだけどなぁ」
「結局それだよな。人間か動物の姿じゃなきゃ、会話できないだろ。グングニールって言うくらいだから、槌か槍じゃないの?」
興味無さげに返す。
「うんうん、おまえと話してると情報探しが絞りやすいんだよ」
気にした風もなく、嬉しそうだ。
情報屋とは、フリーランスの不安定職だ。個人で活動しているのが大半である。だから荒い、とにかく荒い。先天的な情報収集能力を求められる。だが決め事もないため、不特定多数の情報屋が存在していた。
マッドにその実力があるかは謎である。
「悪いな、俺にはどうでもいい。そろそろ行くぜ。おまえと話してると遅くなる」
「今日もスライム狩りか?」
「誰かさんがツケまくるから、ノーリスクハイリターンな材料になるんだよ」
「薬師様、いつも助かってます!」
キールは庶民から下級兵士向けの薬を作る薬師をしている。麻痺や毒、痺れなどの回復剤をメインに低コストの安いものを提供していた。それなのに、このマッドはツケる。商売上がったりとはこのこと。だが昔からの腐れ縁のため、邪険にも出来ない。困った性分である。
「そう思ってるなら、ちゃんと払うもん払えよ」
聞いてないだろうことは分かっているので、さっさと立ち上がり、街を後にした。
(結局、いつともわからない出世払いとかいうんだろうし)
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