近所のレストラン

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近所のレストラン

 Tさんが引っ越した自宅近くには、いつも混み合っているレストランがありました。  昼時にもなれば駐車場は車でぎっしり埋まり、待たされることしばしば。  しかしTさんは納得がいきませんでした。  前にそこで食事をしたことがあったのですが、驚くほど不味いのです。 「たまたま不味いメニューを引いてしまったのかな」と思い、数週間後にもう一度入って違うメニューを注文すると、やはり箸をへし折りたくなるほど不味いのです。  Tさんは繁盛している店の前を通るたびに首をかしげてしまうようになりました。  味覚は人それぞれ。あれを美味しいと思う人がいてもおかしなことではない、と思うことにして心の折り合いをつけることにしました。  世の中には「与党と野党」「甘党と辛党」があるように、相入れない価値観というものはあるのです。
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