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「私の赤ちゃんは? 赤ちゃんの顔を見せて」Fさんがしつこく聞いてきたそうです。
看護師さんたちは困り果ててしまい、結局そのままFさんは産婦人科から精神科に直行しました。ベッドに縛り付けられて。
夜になってもずっと「私の赤ちゃんを返せえ!」と絶叫し続けていたらしいです。分娩の時にいきんだせいで血管が切れて、顔じゅう青アザだらけですから、ビジュアル的には完全にグロテスクなホラーです。
Fさんの絶叫は徐々にすすり泣きに変わって、ようやく静かになった時、看護師はホッとしたのと同時に、奇妙な変化に気づいたんです。
Fさんの病室から赤ちゃんの泣き声が聞こえるからです。
あれ?と思って病室に入っても赤ちゃんなんてどこにもいない。
Fさんは穏やかな表情で自分の胸元を撫でていたそうです。
まるでそこに赤ちゃんを抱っこしているかのように。
今もFさんは見えない赤ちゃんをずっと育て続けています。
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