90人が本棚に入れています
本棚に追加
Tさんは近所に住んでいる友人を自宅に招いて宅飲みをしていた時に、レストランのことを聞いてみました。
「あのレストランは、なんであんなに流行ってるの?」と。
「まだ引っ越してきたばかりだもんな。この町のことをあまり知らないから仕方ないか」友人の顔は酒で少し赤くなっていました。
「というと?」Tさんはビールを飲みながら身を乗り出しました。
「あの店の客のほとんどは、同じ宗教に属してる信者なんだよ」
「宗教?」Tさんは酔いが冷めそうでした。
「この町はA教の信者が多いんだ。あいつらは同じ信者の店にしか行かない。そうやって助け合ってるのさ。互助会ってやつさ」友人は笑っていた。
「あんなもん食わないといけなくなるなら脱退したほうがマシだろ」そう言うとTさんは友人が持ってきた珍味を口に運びました。
「店の人は客を見て誰が信者かすぐに分かるんだよ。それで初めて来た客には、特製のクスリが入った料理を出すんだよ。だから不味かったのさ」
「嘘でしょ?」
「本当だよ。それを何度も飲むうちに信心深くなってしまうのさ。君が今食べている珍味にも入ってるよ」
友人はそう言うと、まるでコンセントを抜いたかのようにさっきまでの笑顔が顔から消え、Tさんを睨みつけたそうです。
最初のコメントを投稿しよう!