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「ごめーん、おまたせー!」
「もう、遅いですよ和人さん」
急いでトイレから戻ると、やや膨れっ面のミル様が待っていた。
「ごめんごめん、トイレが渋滞してて」
「絶対に嘘です!」
バレるよねそりゃ。ちなみに戻ってくる時にちょっと迷ったのは内緒だ。
「許してくれよー。今日は楽しく観光する日だろ?」
「和人さん、今日は図書館に行くんですよ……」
膨れっ面だったミルが今度は呆れ顔になった。
表情が豊かな奴だ。
それはともかく、確かに今日は図書館に行くって話だったな。
「まぁ、もうそろそろ開館する頃ですし、図書館に向かいますか」
「おう!って、随分と遅い時間に開くんだな。朝からやってるイメージだったんだけど……もう昼前だぞ」
「彼女は仕事に対しては怠け者ですから……でも、研究者としては超が着くほど勤勉ですよ」
ほへー。図書館運営はほとんど趣味状態……いや、逆か?仕事だから嫌々やっている感じだろうか。
「ところで気になったんだけど、その人はなんの研究をしてるんだ?」
「あぁ、伝えていませんでしたね。彼女は『魔術』の研究家なんです」
「まじゅつ……?」
何だか急にファンタジーっぽい単語が出てきたな。
「魔術ってあの魔術のこと?」
「和人さんがどの魔術のことを言っているのか分かりませんが、恐らくその魔術で合っていますよ」
「魔術ってほら、魔法みたいなもんだろ?ひゅー、ずばばーん!みたいな」
俺は指先でくるくるーっと表現してみせた。
「あはは……こちらの世界では、魔法と魔術は根本的に異なります。宜しければご説明しましょうか?」
「おお、そりゃ助かる。是非お願いするよ」
「では、歩きながら」
図書館へ歩を進めつつ、ミルは魔術について解説をしてくれた。
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