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「まず、『魔法』について説明します」
「ほうほう」
「魔法というのは、そのものに対して元々備わっている『超常的な力』のことを言います。例えば何も無いところから火を出したり、空を飛んでみせたり、はたまた瞬間移動をしたりと、その能力は様々です。中には概念に干渉する強力な魔法も存在すると聞いています」
「つまり、特殊能力みたいなもんか?」
「はい、そうですね。これらの魔法は十人十色で、同じ魔法は一つとして存在しません。まさに彼ら『魔法使い』の特性と言ってもいいでしょう」
ほーう。なるほどな。
魔法使いはチート使いってわけだ。
「しかし、魔法使いはそう多くありません。寧ろ過半数の人間は魔法を扱うことができないのです」
「へ。もしかしてミルも?」
「はい。私も魔法使いではありません。
でも、自分だって魔法使いになりたいと考える人間が居ると思いませんか?」
「確かになぁ……そりゃ魔法なんて使えたら便利だし、誰だって……あっ」
「気付きましたか?そこで『魔術』が登場するわけです」
おおう。何だか面白くなってきたぞ。
「魔術とは『魔法を再現する術』のことで、はるか昔魔法使いに憧れを抱いた一人の村人がその研究を始めたことが始まりです」
「ほうほう」
「魔法が『そのものに元々備わっている固有能力』であるのに対し、魔術は『研究次第で誰でも扱える力』なのです」
「図書館の『彼女』もその研究者の一人ってわけか」
「はい、その通りです。彼女の場合飛び抜けていますが……魔術は大気中や自らの体に存在する『魔力』というエネルギーを、『魔術式』と呼ばれる『超常的な力を呼び出すための複雑な式』に流し込むことで発動します。
この魔力は基本的に誰の体にも宿っていて、扱い方さえ知っていれば誰でも魔術を使えると言えます」
「それってもしかして俺の体にも魔力があるのか?」
「はい。個人差で多い少ないはあっても必ず宿っているものです。例えば急な気だるさは何らかの要因で魔力を消耗した時、人体発火現象などは偶然が重なって魔力が暴走し、これまた偶然にも火炎の魔術を発動させてしまった形になりますね」
な、なるほど……そういうことだったのか。
もしかしたらテレビで見た超能力者ってのも、そういった類の人間なのかも知れないな。
「魔法使いが基本的に一つの魔法しか扱えないのに対して、魔術のメリットは、誰でもいくつでも扱えることです。それこそ研究次第では数十を超える魔術を扱うことさえ出来ます」
「す、すげえ……でも、待てよ。それってもう魔法の完全上位互換じゃね?」
「それがですね、魔術のデメリットはまず扱えるようになるまでが難しいんです。例えば初歩と言われる種火程度の火を出す魔術でさえも常人なら六年、早くて三年はかかってしまいます。初歩でこれですから、自由自在に空を飛び回るなんてことになると十五~二十年は必要になりますね」
「ヒエッ……魔術も大変なんだな」
「それともう一つ、魔法は魔力を行使せずとも扱えますが、魔術の場合はそうはいきません。何せ魔法ではないので、超常的な力を生み出すには魔力が必要不可欠なのです。ですから、一度魔力不足に陥ればその瞬間魔術の行使は不可能になり、そして魔力が完全に無くなることは死を意味します」
「そうなの!?」
「はい。魔力は全ての力の源、理と呼ばれていますから。魔法はまた別の力がはたらいているようですが」
なるほど……誰でもいくつでもとは言っても、研究に莫大な時間を要する上に何度でも使える力じゃないってわけか。
魔法ってすごい。
「まぁ、魔法と魔術についてはこの辺ですかね」
「おお、ありがとう。すごくわかりやすかったよ。詳しいんだな、ミル」
「え、ええ。多少ではありますが魔術の心得がありますので……」
と、ミルははにかんだ。本当に表情豊かな奴だ。
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