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「さあ、着きましたよ」
「おお、ここが」
ミルが足を止め、指を指す。
そこには至って「ふつー」の図書館があった。
少し違うのは木造建築っぽいってことくらいだが……
「って、ここ?本当に?」
「?はい。ここが『国立図書館』です」
「お、おう。すごい魔術師がいるって話だから、もっと大きいのかと思ってたんだが」
「ふふっ。初めて訪れる人は皆そう言います。入ったら驚きますよ」
「?」
何に驚くんだろう、そう思いながらミルの後に続き、重厚な音を響かせながら開いた大きな木製の扉を越えたところで、俺は素直に驚いてしまった。
「!?」
目を見開いた。
あんぐりと口を開けていた。
唖然とした。
だって、目の前に広がる『図書館』は、外から見た「ソレ」よりも、遥かに広大なのだ。
「ね。驚いたでしょう?」
それを知ってか、ミルは少し得意気に微笑んだ。
正直彼女の声はあまり脳内に響いてこなかったが、かろうじて反応することができた俺は口を開く。
「す……すげえ……」
「でしょう。この図書館は、彼女の魔術によって拡張されているんです」
「ま……魔術か……なるほど、これが……」
正直に言って圧倒された。
と言っても、初めて見る魔術がここまで「圧倒的」だと、そうなっても仕方がないと、年甲斐もなく思いっきり口を開けて驚愕してしまった自分に言い訳をする。
「『マーリン』さん?マーリンさーん?ミルですー!お母様の遣いで伺いましたー」
……はっ。
いけない。いつまでも呆気に取られていては。
「マーリン」……恐らくこの図書館の管理人、天才魔術師の名だろう。
ミルが何度も呼んでいるが、返事がないようだ。
「いないのか?」
「いえ、そんなはずは……少し奥の部屋を見てきます。すみませんが少し待っていてもらえますか?」
「もちろん。少し見学しておくよ」
「助かります。それでは後ほど」
そう言うと、ミルは足早に奥の方へと消えていった。
……さて、改めてこの図書館を見渡してみよう。
嫌でも視界に入ってくるのは、そこいらの図書館が泣いて逃げ出すほど莫大な数の本棚だ。そしてそのどれにもぎっしりと本が並べられている。
しかし、狭苦しさは微塵も感じさせない。
むしろ開放的にさえ思える空間だ。
……だが、不思議と利用客が一人も見当たらない。
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