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そりゃおかしい。
確か俺は自分の部屋で寝ていたはずだ。
俺は夢の類かと頬を抓るが、
「い、いひゃい」
「えっ?どうかなされました?」
思いのほか痛く、少し涙目になった。
「ちょっとクセで……」
「そ、そうですか」
ドン引きされている。俺は過去の自分を抓りあげてやりたいと思った。
更には、心做しか以前よりも強く感じる己の力に、まだ目を濡らしている始末だ。
「い、いやー、それにしても驚きましたよ。今朝散歩に出かけてみれば、うちの庭先にあなたが倒れているんですもの」
見かねたミルが、フォローとばかりに話を投げ掛けてくれた。
「庭先?ほんとに?」
という訳で有難くそれに乗っかり、話を探ろうとしてみるが、
「はい、庭先に」
「ふぅん……」
話は終わった(無慈悲)
しかしそこはこのお気楽人間。
なぜ庭先に倒れているんだろうとか、お腹が空いたなど色々思うことはあるが、もうこの辺で深く考えるのはやめることにした。
「あ、目が覚めたら、マ……お母様がお話を聞きたいと仰っていたので、ついてきていただけますか?」
「う?あぁ、もちろん」
寝かされていたベッドから這い出る。かなり眠りこけていたはずだが、不思議と体は軽かった。
「あの、そういえば、私はあなたのことをなんと呼べばよろしいでしょうか?」
ミルの母のもとへの移動中、こんなことを聞かれた。
確かにまだ名乗ってなかったな。
「俺は鈴谷和人だ。和人って呼んでくれ」
* * *
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