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* * *
「こちらです、カズトさん」
さてはて、俺はミルに連れられ、客間と思しきドアの前に立った。
なんか今になって緊張してきたぞ。
ちなみにこのカズトさんという呼び名は、ミルが呼び捨てを嫌がったので、妥協案としてこうなった。
「お母様、客人をお連れしました」
ミルがノックをすると、中から「どうぞ」との返事があった。
……落ち着けー、ひっひっふー。
「ではカズトさん、どうぞ」
ドアを開けたそこには……!!
「あらあら、ようこそいらっしゃいました。私はフランシウム家当主、シオン=フランシウムと申します」
絶世の美女が、居た。
髪色はミルと同じで、髪の長さはセミロングくらいだろうか。娘よりも幾分か落ち着いたような印象を受けるが、年はせいぜい俺と同じかひとつ上程度に見える、お姉さんのような女性だ。
「ふふ、美女だなんてそんな、光栄ですわ」
心を読まれた!?
「……声に出ていましたよ、カズトさん。ちなみに今驚いていたのは顔に出ていました」
俺ってそんな分かりやすいタイプだっけなー(棒)
「面白いお方ですわね。ささ、お掛けくださいな」
「はは……では失礼します」
用意されていたソファーに座る。ふっかふかである。
「お菓子でもどうぞ~」
「いえいえ、お構いなく」
「まあまあ、遠慮なさらず」
向かい側のソファーに座ったシオンさんが、返事を待つ前にいかにも高級そうなクッキーと紅茶を淹れてくれた。
「では遠慮なく」
クッキーを口に放り込み、紅茶を啜る。
……うまい。
クッキーの上品な甘味と紅茶の絶妙な香りが口の中でハーモニーを奏で、えもいえぬ幸福感を生み出す。遠慮するべきだが、続けて2個、3個と食べてしまう。
「す、すごいですね、お母様」
「まあまあ。気に入って頂けたようで何よりですわ」
う ま い っ ! (テ-レッテレ-
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