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「ちなみに、ここは確かに、あなたが居た世界とは違う世界のはずよ」
「まじ……っすか」
思わず「まじかよ」と言いそうになったが、慌てて修正した。
「この世界の名前は天趣域――――総ての理想が集まる場所、と、いわれているわ」
わお、なんかすげぇ所に来ちまった。
「理想郷ってやつですか」
「そ。まぁ実態はそうでもないのよね~」
シオンさんはあっけらかんに笑うと、紅茶に口をつけた。
「話を戻すけれど、基本的には、ここには『理想』とされるものしか入ってこないわ――――でも、たまにあなたみたいなのが」
「流れ込んでくると」
「そのとおり」
なるほど。どうやら俺は理想郷に迷い込んだラッキーボーイらしい。
「それで、どう?何か思い出せたかしら」
「うーん……」
それはともかくだ。
他に覚えていることは……妙な夢?
「あの、夢を見ました。変な光の玉を掴む夢です」
「光……?ふむ、興味深いわね」
シオンさんは顎に手をやって考え込む素振りを見せた。
「すみませんカズトさん、お母様は根っからの学者気質で……自分の知らないことに目がないのです」
学者……なるほど、やけに興味深そうに話を聞いてくれるなと思ったら、そういうことか。
「構わないよ。自分のことについて考えてくれてるんだから」
OKサインを出しておいた。
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