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それからしばらく、シオンさんは顔を上げると
「なるほど。考えてみたけれど、今すぐには結論は出せないわ。もう少しあなたのことが知りたくなってきちゃった」
と、実に知的探究心に溢れる眼差しで俺を見た。
「そうですか……あ、でも俺なんてそんな」
「よし、決めたわ。あなた、しばらくここに住みなさい。非常に興味深いわ」
「!?」
なんと、ここに住んでもいいと仰りましたか。
それは有難いのだが…
「いいんですか。こんな素性も分からない俺なんかを……」
「あなたに興味が湧いたの。これは私のわがままよ。ダメかしら?」
ダメかと言われれば、そりゃまぁ行く宛もないし有難いけれど。
「本当にいいんですか?」
「いいのよ。決まりね」
シオンさんはにこっと笑った。
「あの、ありがとうございます」
「気にしなさんな。『来るもの拒まず去るもの追わず、害を成すもの叩きのめす』がフランシウム家の方針よ」
なにそれ怖い。
「それはそうと、一緒に暮らす間柄になるのだから、そんなよそよそしい態度はよしなさい」
「よそよそしい態度、ですか?」
「敬語のことよ」
「あぁ、なるほど」
敬語をやめろということらしい。
「じゃあ、よろしく、シオンさん」
「呼び捨てでいいわ」
「シ、シオン」
「ふむ、よろしい」
シオンさ……シオンは再びにっこりと笑った
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