9.雨音コール

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 バシャバシャとやや激しい水音を立てて歩道を走る。不意にスマートフォンのオプションメニューを開いて天気予報を珍しく確認すれば【降水確率80%】とあった。もう、なにもかもバカバカしくなる。  そこで、その無意味なランニングに終止符を打つと視線の先のカフェに意識が集中する。  ガラス張りと木材を多めに使用されたちょっとレトロで、落ち着いた雰囲気のあるお洒落な喫茶店だ。この雨だ、同じように天気予報と円のない人達で中は多分満席だろうな……なんて考えると窓際の屋根のあるスペースへ避難する。  少し屋根の広いそこは、雨宿りをするには絶好のスペースだった。  とん、と軽く窓に寄りかかると薄暗い空を見上げる。   ――――雨は、嫌いじゃない。鼻をつくじっとりと濡れたアスファルトの臭いも、鼓膜をくすぐる雨音も昔から好きだった。  けれど、基本的な移動手段が徒歩か自転車の俺にとっては憎き相手でもあって。  レインコートは、あの肌に張り付く感じが嫌いだった。傘は、さしながら運転するだけで、今は捕まってしまう。  生きづらいなあ、なんて心の中で苦い笑みを零しているとふ、と思い出す。  そういえば、以前車に乗せてもらった時に知ったことだけど……高宮さんは車だったな。白のワンエティ、カッコイイなぁなんて思ったりして覚えてしまった。     
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