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9.雨音コール
慣れない手つきで、人差し指を使い軽く画面をタップすると画面がするりとスクロールされる。
あ、から始まり…か、き、く、け……どの欄も空白だ。
昔から特定の人物と繋がりを持とうという考えが薄く、俺のスマートフォンにデフォルトで入っている電話帳は常に空席ばかりだった。
するするとさらにスクロールさせていくと、さ行を通り過ぎた行にさしかかる。そこで、俺の指は動きを止めた。
最近、そんな俺の電話帳の空席を一つだけ埋めた人物がいる。
――高宮秀一、パート先の常連男性客だ。
先日、一日休みをもらった俺は気晴らしに一つ駅を乗り継いで買い物に出ていた。
けれど、普段あまり外出しないこらだろうか。天気予報を確認するのを忘れた俺は、その日の午後から雨が降ることを知らなかった。
目的のものも買い終え、駅へ向かおうとしたせつなぴたり……と雫が頬をぬらす。そして、次第にしとしとと街全体を包み始めた。
「うわ、本格的に降ってきたな……っ」
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