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深夜二時を過ぎた外の空気は、少しだけ冷たくて眉間にシワが寄る。
私が住む2LDKのアパート。もう明かりがついている部屋は少ない。住民専用のポストの前で一度立ち止まると、意味もなくポケットからスマートフォンを取り出して電源ボタンを押してみた。
そこにはいつもどおりの待ち受け画像が出迎えてくれるだけで、なにも変わりがない。
―4月1日。私は昨日、誕生日だった。
とはいっても、26になった私にとってはそこまで特別なイベントでもなくなっていたんだけど。
それでも、ここ2年くらいは少しだけそんな私の考えも変わっていたのに。
あぁ、やっぱこんなものなのかな。なんて、思ってしまう。
私には、2年前から付き合っている彼が居る。
高校時代の同級生で、同窓会で偶然会ったとき「実はずっと好きだったんだけど」なんてほろ酔いの状態で告白されて。私も、ほろ酔いのまま「じゃあ付き合う?」なんて言っちゃったりして。
あの頃は同い年の男子になんて興味なかったのに、偶然会った彼はちょっとだけ大人っぽくなっていてらしくもなくときめいてしまったのだ。
カンカンカンカン、極力音が響かないようにアパートの階段を1段ずつ慎重に登っていく。
手袋を忘れたせいで冷え性の私の指先はさらに冷え切って、氷みたいだ。
扉の横にある小窓からはやっぱり明かりはない。
こんな時間だ、きっと…同棲している彼は眠ってしまったんだろう。なんて考えながら私は家の鍵を探すために肩にかけていたカバンをそっとおろし探る。
――その時だった。
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