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パチン、という微かな音と共に小窓の向こうから優しい光が漏れ出す。
「え…」
突然のことにカバンを探るためにしゃがみこんでいた私は、そのまま座り込んで扉を見つめる。
嘘、うそうそ、うそだよ…。なんで?
彼は、朝が早くて0時には眠くなっちゃうのを知ってる。
昨日だって本当は私が早く帰ってきて、一緒にお祝いするはずだったのに結局仕事が長引いてダメになっちゃった。
寝てても仕方がないって、去年みたいに。おととしみたいに、お祝いしてもらえなくても仕方がないよって言い聞かせてたのに。
「なんで起きてるの…」
そんな私のつぶやきをよそに、目の前の扉は小さな開錠の音を立てた後ゆっくりと開いた。
「さゆり」
優しくて、ちょっとハスキーで、私の大好きな声。私の、大好きな人の声だ。
「あ、あきらぁ……」
大人げもなく瞼が熱くなって、きゅっと目を閉じる。
泣いてしまいそうで、いや、きっともう涙は浮かんでいるだろう。それをこぼさないように、私は強く強くまぶたを閉じたまま彼の名前を呼んだ。
「はは、なんでそんなとこに座り込んでるんだよ。ほら、中入りな」
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