優しい人、優しかった人

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金曜日の定時を迎え、薫は着替えを済ませて喫煙室に向かった。 無事に一週間の仕事を終え、どこか安堵した様子のオジサンたちに混じって、薫がタバコに火をつけた時、後ろから誰かに肩を叩かれた。 (笠松くんかな?) 振り返ると、そこにいたのは志信ではなく浩樹だった。 「あ…。」 薫は一瞬息を飲んですくみあがる。 「お疲れ様。」 「…お疲れ様です。」 「少し話したいんだけど…この後、時間あるかな。」 「……。」 薫は言葉を何も発する事ができないまま、火のついたタバコを手に立ち尽くしていた。
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