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「薫…?」
他の人には聞こえないような小声で浩樹に名前を囁かれると、薫は唇をギュッと噛みしめて、出来るだけ平静を装って声を絞り出した。
「……卯月です。」
「あ…ごめん…。」
薫は浩樹の視線から逃れるように、まだ火をつけたばかりのタバコを灰皿に投げ入れ、喫煙室のドアノブに手を掛けた。
「…失礼します。」
「あ…待って。」
喫煙室のドアを開けると、ちょうどそこに志信が立っていた。
「あっ、卯月さん、お待たせ。」
薫は思わず志信の腕を掴んだ。
「行こう、笠松くん。」
「えっ?!」
腕をギュッと掴んだままスタスタと先を歩く薫の背中を、志信は不思議そうに見ていた。
(なんだろう…?何かあった?)
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