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会社を出てしばらく歩いたところで、志信はもう片方の手で薫の肩を掴んだ。
「ちょっと待って。どうかした?」
薫はやっと足を止めて、うつむいている。
「卯月さん?」
志信が顔を覗き込むと、薫は唇を噛みしめて、目に涙を浮かべていた。
(えっ…泣いてる?!)
突然の事に志信は慌ててハンカチを差し出し、薫の肩をポンポンと優しく叩いた。
「あのさ…とりあえず、涙拭いて。」
薫は志信の腕から手を離し、差し出されたハンカチを受け取って目元を覆った。
「ごめん…。今日はもう帰る…。」
「謝らなくていいけど…何があったか、オレで良ければ話して?こんな卯月さん、一人で帰せないよ。」
薫はうつむいたまま首を横に振る。
(話したくない…か…。)
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