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何があったのだろうと思いながら、志信は薫の手を握り、優しく話し掛けた。
「話したくないなら無理に話せとは言わないけど…。気持ちが落ち着くまで、少し、一緒に歩こうか。」
小さくうなずく薫の手を引いて、志信はゆっくりと歩き始めた。
「泣きたい時は泣いたらいいよ。オレにはなんにもしてあげられないけど…せめて、遠慮なんかしないで。」
志信は前を向いて、黙ったまま薫の手を引いて歩いた。
志信のハンカチで溢れる涙を拭いながら、時おり小さくしゃくりあげる薫の方は見ないままで、志信は何も聞かずにただ黙ってゆっくりと歩き続けた。
(何か…よほどつらい事でもあったのか…。)
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