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しばらく黙って歩き続けていた志信が、公園のベンチに薫を座らせ、顔を覗き込んだ。
「少しは落ち着いた?」
「うん…。ごめんね…。」
うつむいたまま弱々しく呟く薫の肩を、志信は優しくポンポンと叩いた。
「謝らなくていいよ。」
明らかに普通ではないのに、その理由を無理に聞き出そうとしない志信の優しさが、薫の心をじんわりと温かくした。
「ハンカチ…汚しちゃった。洗って返すね。」
「気にしないで。それよりさ、腹減らない?」
「…減った。」
「結構歩いたからな…。いい運動になった。オレ、運動不足だからちょうど良かったかな。」
笑って話す志信の顔を、薫はまだ涙で潤んだ目で見上げて微かに笑みを浮かべた。
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