優しい人、優しかった人

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「やっぱり卯月さんはお酒強いなぁ…。」 「普通でしょ?」 「見掛けによらずよく食べるし…。その細い体のどこに入るんだろう?」 志信が不思議そうに薫を見て笑うと、薫は得意気にお腹を指さした。 「ここ。」 「普通じゃん。」 「普通だよ?」 「いやー、それが普通じゃないんだって。」 志信がタバコを手に笑うと、薫はそのタバコの香りのするかつての愛しい人を思い出し、ほんの少し寂しそうに笑みを浮かべた。 「そうなのかも…。私も、普通のかわいい子なら良かったのかなぁ…。」 「…え?」 随分飲んだ酒が回ったのか、薫は少しぼんやりとしているように見えた。 (珍しい…。酔ったかな…?)
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